凍結胚を個体化して提供する際の微生物検査について

現在、理研BRCでは効率的な事業の推進のために、全ての業務の洗い出しと適正化を図っております。その一環として、提供マウスの微生物モニタリングに関する業務についても見直しました。これまで、凍結胚ストックからのマウス生体の提供をご希望する場合には、提供マウスとともに、個体化の際に用いた実際の里親を使って有償にてモニタリング対象微生物の検査を行い、その結果を利用者に報告してまいりました。しかし、これまでの事業で蓄積された検査実績(下記、経緯参照)に鑑み、提供毎に実施していた個体化の際に用いた里親の微生物検査を省略しても、モニタリング対象微生物の十分な監視が可能であると結論されました。つきましては、平成22年9月17日より、下記の様に実施することとなりました。利用者の皆様にはご理解を賜りますようお願い申し上げます。

 

  1. 全ての系統の保存用凍結胚作製時に個体化できることを確認しており、その際個体化に用いた里親の微生物検査を行います。これにより、当該系統の凍結胚作製及び個体化操作の過程でモニタリング対象微生物の汚染がないことを確かめます。加えて下記2.に記しますように、個体化作業時に関係するマウスを対象とした囮検査を行ないます。これにより、提供するマウス生体にモニタリング対象微生物の汚染がないことを確認します。
  2. 凍結胚を個体化して提供する場合には、次の検査書を提供します(図参照)。
    • A) ご希望の系統の保存凍結胚の作製時に個体化確認し、その際に用いた里親を対象とした微生物検査書
    • B) 仮親作製用マウスおよび凍結胚を移植した仮親を対象とした囮検査書(飼育室2-1)
    • C) 里親作製用マウスを対象とした囮検査書(飼育室2-4)
    • D) 帝王切開後の産子とその里親を対象とした囮検査書(飼育室2-Q)
  3. これまで通りの提供マウスの凍結胚個体化時の里親の微生物検査をご要望の場合は実験動物開発室 animal.brc@riken.jpへお問い合わせください。別途、検査費用をご負担いただくこととなります。

 

(経緯)凍結胚でのみ保存している系統から生体マウスの提供をご要望された場合、これまでは個体化に用いた個々の里親の微生物検査を利用者負担で実施し、結果を提供してきました。しかし、2007年~2009年の間に957系統の保存用凍結胚を作製して新規保存凍結胚766系統分の個体化確認実験を1,350件、里親の微生物検査を1,271件行なった結果、モニタリング対象微生物の汚染はすべて陰性でした。そして2007年~2009年の間に1,251件の凍結胚ストックの個体化を行ない、その際に用いた個々の里親の微生物検査を実施しましたが、これらの結果もすべて陰性でした。この実績から、当該系統の保存用凍結胚作製時の個体化確認実験に用いた里親の微生物検査結果と、個体化作業に関係する飼育室のマウスを対象とした囮検査によって、リソースのモニタリング対象微生物の感染がないことを十分に確認でき、個々の里親の微生物検査は今後不必要と結論されました。この措置により、凍結胚で保存しているストックより生体マウスを提供した場合でも、微生物検査費用が発生せず、利用者のご負担が軽減されることとなります。

 

*モニタリング対象微生物 (Class C は主に免疫欠損・易感染性動物用)
Class A:
Clostridium piliforme (Tyzzer’s organism), Ectromelia virus、Hantaan virus, Lymphocytic choriomeningitis virus (LCMV), Mouse hepatitis virus (MHV), Mycoplasma pulmonis,Salmonella typhimurium, Sendai virus (HVJ)

Class B:
CAR bacillus, Citrobacter rodentiumCorynebacterium kutscheri, Dermatophytes, Ectoparasites, Helicobacter bilisHelicobacter hepaticus, Intestinal protozoa, Pasteurella pneumotropica, Pinworms, Salmonella spp.

Class C:
Stapylococcus aureusPneumocystis carinii f.s. murisPseudomonas aeruginosa

以上



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