Per1遺伝子E0–E1 E-boxを欠損した 概日時計研究に有用なマウス

RIKEN BRC September 2026
Mouse of the Month

Per1遺伝子E0–E1 E-boxを欠損した
概日時計研究に有用なマウス

B6.B6D2-Per1<em2(delEbox)Ytaka> (RBRC12802)

図1. Mic-628による概日時計の前進メカニズムとPer1Δ(E0E1)マウスの表現型
(a)Mic-628の化学構造。Mic-628はPer1転写を選択的に誘導し、概日時計の位相を前進させる新規低分子化合物である。(b)Per1プロモーターに存在するDual E-boxの模式図。Per1プロモーターには約10 bpの間隔で配置された2つのE-box(E0およびE1)が存在し、Mic-628による転写活性化に必須の制御配列として機能する。(c)Mic-628によるPer1転写活性化機構の模式図。通常、CRY複合体はDual E-box上でPer1転写を抑制している。Mic-628が作用するとCRY複合体が転写活性型へ機能転換し、Dual E-boxを介してPer1転写が選択的に活性化される。
図.2 Dual E-boxはMic-628による概日時計前進作用に必須である
野生型マウスではMic-628投与によりPer1発現が誘導され、行動リズムの位相前進が認められる。一方、Per1プロモーターのDual E-boxを欠損したマウスではPer1誘導および位相前進作用は著しく減弱する。Dual E-boxがMic-628応答性を規定する重要なシス制御配列であることを示している。

哺乳類の概日時計遺伝子として知られるPeriod1(Per1)遺伝子のプロモーター領域には、転写を制御するCLOCK–BMAL1複合体が結合する2つのタンデムE-box(E0およびE1)が並んで存在します。今回ご紹介するPer1Δ(E0E1)マウス(RBRC12802)は、このE0-E1 E-box エレメントをCRISPR/Cas9システムを用いて欠損させたマウスです。本系統において、CLOCK–BMAL1複合体は他のE-box(E3, E4, E5など)に結合して作用するため、Per1遺伝子の基礎的な転写活性は維持されています。
寄託者の高畑佳史先生らは、Per1遺伝子のE0-E1 E-box エレメントを介して、Per1遺伝子の転写を特異的に誘導する低分子化合物Mic-628を発見しました。Mic-628は転写抑制因子CRY1に結合して、CLOCK-BMAL1-CRY1-Mic-628複合体の形成を促進します。この複合体が前述のE0-E1 E-box エレメントに特異的に作用してPer1遺伝子転写を誘導し、その後、PER1による自己抑制フィードバックが働くことで、常に概日時計を前進方向に位相シフトさせるという分子メカニズムが明らかになっています。
野生型マウスにMic-628を経口投与すると、投与時刻に依存することなく、概日時計中枢である脳の視交叉上核と、肺などの全身の末梢組織の概日時計が同時に前進し、行動リズムも前進します。一方、Per1Δ(E0E1)マウスにMic-628を経口投与すると、Mic-628による位相前進作用の大部分が失われることが報告されています。
Per1遺伝子プロモーターのE0-E1 E-box エレメントが概日時計の位相制御に重要であることから、Per1Δ(E0E1)マウスは概日時計遺伝子の発現制御機構や、概日時計の前進メカニズムを解析する上で有用なマウス系統として広く利用されることが期待されます。

 

Keywords : 概日時計、遺伝子転写制御、自己抑制フィードバック、低分子化合物、位相前進
Depositor : 高畑佳史先生 (大阪大学)
Strain name : B6.B6D2-Per1<em2(delEbox)Ytaka>
RBRC No. : RBRC12802
References : [1] Takahata Y, Kasashima Y, Yoshioka T, Yashiki S, Kulikauskaite J, Matsuura T, Ohba Y, Hasegawa H, Yuri N, Iwai N, Otsu N, Kitakata M, Kitaguchi Y, Furune H, Omori C, Mukai M, Komamura-Kohno Y, Huang YY, Hirose M, Koike N, Yamada Y, Nakazawa K, Ui-Tei K, Sakaki Y, Numano R, Uriu K, Tei H.
A Period1 inducer specifically advances circadian clock in mice.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2026 Jan 27;123(4):e2509943123.
[2] 経口投与で体内時計を「進める」新化合物を発見: 時差ぼけや概日リズム障害の治療に新たな光
2026年1月26日大阪大学プレスリリース

 

September 2026
Saori Mizuno, Ph.D.
Contact: Experimental Animal Division, RIKEN BioResource Research Center (animal.brc@riken.jp)
All materials contained on this site may not be reproduced, distributed, displayed, published or broadcast without the prior permission of the owner of that content.


コメントは受け付けていません。