BRC Current Technology November 2013

RIKEN BRC
BRC Current Technology
November 2013

8. 顕微操作胚由来ES細胞の樹立

系統保存および遺伝学研究のリソース

マウスでは、顕微授精や体細胞核移植技術などにより、容易に特殊な胚を作出することが可能である。このようにして作出した胚を胚盤胞まで発生させ、一定の条件下で培養すると、胚性幹細胞(ES細胞)が樹立できる。この技術を応用して、これまでに様々な性質を持つES細胞が樹立されてきた。例えば、顕微授精技術を用いると、ラボマウスと野生由来マウスのF1交雑胚を自在に作出することができ、対立遺伝子多型(allelic polymorphism)を持つES細胞が樹立できる[1](上図A)。また、同様に顕微授精(2個の精子細胞核注入、上図B)と除核技術を併用することで、対立遺伝子多型を持つ雄性発生胚(androgenetic)由来ES細胞も樹立できる[2]。これらのES細胞は、ゲノム刷込みなどの遺伝学研究に用いられている。一方、核移植クローン胚からは、ドナー体細胞と全く同一の遺伝的背景を持つES細胞を樹立できることから、バックアップ的な系統保存法に用いられる[3](上図CおよびD)。また、リンパ球由来の核移植ES細胞は、リンパ球特有のDNA再構成を有していることから、免疫学の研究に用いることができる [4]。このように、顕微授精や核移植技術は、個体を生み出すだけでなく、系統保存用あるいは研究用の様々なES細胞を作出する強力なツールでもある。

 

References:
[1] Shinmen et al. Mol Reprod Dev 74:1081-1088, 2007
[2] Miki et al. Genesis 47:155-160, 2009
[3] Wakayama et al. Science. 292:740-743, 2001.
[4] Inoue et al. Curr Biol 15:1114-1118, 2005.
理研バイオリソースセンター(細胞材料開発室)が保有する顕微授精または核移植胚由来ES細胞
(C57BL/6 x MSM/Ms) F1 ES細胞: AES0131AES0132AES0133
(C57BL/6 x JF1/Ms) F1雄性発生胚ES細胞: AES0147、AES0148、AES0149(提供開始予定)
体細胞由来ES細胞: AES0012 他多数
T細胞由来ES細胞:AES0127


コメントは受け付けていません。