BRC Current Technology November 2020

RIKEN BRC BRC Current Technology
November 2020

15. 野生由来Spretus マウスの生殖工学技術の開発

異種野生マウスの効率的な保存と利用へ

過排卵処置と交配のスケジュール
RIKEN BRC では、50系統以上におよぶ野生由来マウスを維持し、世界中の研究者に提供をしています。実験用マウスと同じ Mus musculus 種の亜種系統の豊富なコレクションに加え、貴重な異種Mus属マウスも維持しています。異種の野生由来マウスは、亜種マウスよりもさらに大規模な多型を有した重要な研究用資源ですが、基本的な生殖工学技術が開発されていないという欠点がありました。そこで私たちは、異種野生由来マウスで最も広く用いられている Mus spretusマウス(SPR2系統)の生殖工学技術の開発を目指しました。これまで、SPR2マウスの体内および体外受精卵を得ることは極めて困難でした。そこで、抗インヒビン抗体を用いた過排卵処理にエストラジオール処理と自然交配を組み合わせることにより、1匹当たり平均16個の受精卵を得ることに成功しました。また、エチレングリコールを基剤とする液を用いて2細胞期胚のガラス化保存法を可能にし、さらに通常のICRマウスに替えてB6C3F1(C57BL/6とC3Hの交雑系F1)をレシピエントに用いることによって、凍結融解胚の胚移植を実用化しました。

今後、これらの技術を用いることにより、Spretus マウスの維持、提供、研究利用が促進され、さらに遺伝子改変系統も作出されることが期待されます。

 

Reference: A Hasegawa et al. “Development of Assisted Reproductive Technologies for Mus spretus.” Biol Reprod, DOI: 10.1093/biolre/ioaa177


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