BRC Current Technology Oct 2011

RIKEN BRC BRC Current Technology
October 2011

2. First-Wave雄性生殖細胞を用いた超迅速
コンジェニック化技術

哺乳類最短の1世代40-45 日に短縮

マウスの未熟精子

生後22日齢マウスの未熟精子 (円形精子細胞;右図点線)を超迅速コンジェニックに使用。

遺伝子改変マウスのコンジェニック化の効率"

遺伝子改変マウスのコンジェニック化の効率。
系統樹立に自然交配では400日かかったところ、未熟精子を用いた場合180日で系統樹立が完了した。

実験用マウスあるいはラットにおいて、遺伝的背景を均一化(コンジェニック化)することは目的とする遺伝子や表現型を解析する上で重要です。しかしながら遺伝的背景を均一化するには10世代(N10)まで繰り返し戻し交配を行う必要があり3~4年の時間が費やされます。 近年、多型マーカーを元に戻し交配に用いる個体を選抜するスピードコンジェニック法が開発され、計算上N4あるいは5での系統樹立が可能となりましたが、最低でも1年かかるのが現状でした。 そこでコンジェニック化のさらなるスピードアップを図るため、未熟雄個体の “first wave” 生殖細胞の利用について検討を行ったところ、マウスにおいては生後18日齢で半数体の生殖細胞(円形精子細胞)が出現し、生後22~25日齢で顕微授精に十分対応できる数まで増加することが明らかになりました(1)。 そこで幼若齢を用いた顕微授精技術と多型マイクロサテライトマーカー(74 ~176個)による選抜を併用してトランスジェニック、ノックイン、ENUミュータント系統のC57BL/6遺伝的背景へのコンジェニック化を試みたところ、それぞれ106~190日で系統樹立に成功しました(2)。また本法はC57BL/6以外の系統(NOD-scidなど)にも適応できることを確認しています。
本法は希望とする遺伝的背景での目的遺伝子の表現型解析を行う最速手段といえます。
(遺伝工学基盤技術室、実験動物開発室、動物変異動態解析技術開発チーム、マウス表現型解析開発チーム)

本技術は文部科学省科学研究費補助金により、東京大学大学院医学系研究科(栗原裕基先生)との共同研究により開発されました。

 

プレスリリース: http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2009/090331/index.html
References: 1. Miki et al., J Reprod Dev 50: 131-137 (2004)
2. Ogonuki et al., PLoS One 4: e4943 doi:10.1371/journal.pone.0004943 (2009)


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