BRC Current Technology October 2020

RIKEN BRC BRC Current Technology
October 2020

14. 1世代でES細胞由来の精子のみを持つ
キメラマウスを作出

コンディショナルノックアウトマウスを用いない
致死遺伝子の機能解析

図解キメラマウス作出方法

RIKEN BRC では、ゲノム編集技術を利用した発生工学研究開発を行っています。組織特異的あるいは時期特異的に遺伝子を欠損させたコンディショナルノックアウト (cKO) マウスは、全身でノックアウトすると致死となる遺伝子 (致死遺伝子) の機能解析にあたり強力なツールですが、cKOマウスの作出には一般に時間と労力を要します。そこで我々は、目的の組織が遺伝子変異を有するES細胞のみに由来するキメラマウスを簡便に作出する方法を開発しました。まず、生殖細胞の発生に必須のNanos3遺伝子のエクソンを標的とした3種類のguide RNA (sgNanos3) とCas9 mRNAを野生型マウス受精卵に顕微注入し、ホストの胚盤胞を作成します。そこへ致死遺伝子であるDnmt3bを欠損した雄ES細胞を注入しました。作出した雄のキメラマウスから生まれた産子は全てES細胞に由来しており、キメラマウスがES細胞に由来する精子のみを作ることが分かりました。また、過去のcKOマウスを用いた報告と同様に、Dnmt3bが雄の生殖細胞の分化に必須ではないことを明らかにしました。今後この手法が、他の組織における致死遺伝子の機能解析へ応用されることが期待されます。

 

References: [1] K Miura et al. “Generation of chimeric mice with spermatozoa fully derived from embryonic stem cells using a triple-target CRISPR method for Nanos3
Biol Reprod, DOI: 10.1093/biolre/ioaa176
[2] JC Schimenti. “Conditional surrender in one generation: determining the reproductive roles of mouse embryo lethal genes by embryo complementation”
Biol Reprod, DOI: 10.1093/biolre/ioaa193


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