Recql5遺伝子変異マウスを用いた染色体断片化後再合成の誘発

RIKEN BRC April 2025
Mouse of the Month

Recql5 遺伝子変異マウスを用いた
染色体断片化後再合成の誘発

C57BL/6N-Recql5<em1Chuan> (RBRC12284)
C57BL/6N-Dp(Hmga2-Rassf3)<em4Chuan>In(10)<em4Chuan> (RBRC12310)

A.B.

(A) Recql5変異マウスに対して電気穿孔法で CRISPR/Cas9、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)を受精卵に導入し、染色体再編成を誘導する。
(B)誕生した複雑な染色体再編成(CCRs)マウスの模式図。

Recql5遺伝子は、DNAの複製、転写、修復に関与するDNAヘリカーゼRecQファミリーの1つです。寄託者の岩田悟先生、岩本隆司先生らは、DNA修復遺伝子のホモ欠損マウスの多くが胎生致死を示すにも関わらず、Recql5遺伝子ホモ欠損マウスは成体まで生存するという知見に着目し、Recql5遺伝子フレームシフト変異マウス(RBRC12284)の受精卵とゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いて、複雑な染色体再編成(Complex chromosomal rearrangements: CCRs)の誘発を試みました。そして、誕生したゲノム編集マウスに対して、次世代シーケンス解析を行った結果、染色体断片化後再合成(chromoanasynthesis)という、複雑な染色体再編成が一斉に形成される新規のゲノム現象を検出し、これまで作製が困難であった3つ以上の染色体断片を結合させることに成功しました。
実際にRecql5遺伝子変異マウスを用いて、3箇所のDNA二本鎖切断(DNA double strand break: DSB)を誘導して作製した、10番染色体上に重複と逆位、3つの融合遺伝子を持つマウス(RBRC12310)も寄託されています。
生体内では染色体再編成が頻繁に生じており、複雑な染色体再編成は、がんや先天性疾患との関連も報告されています。Recql5遺伝子変異マウスを用いたゲノム編集マウスの作製は、染色体をターゲットとした新規マウスモデルの作製に有用であり、生命メカニズムの解明、疾患研究への応用への貢献が期待されます。

 

Keywords : DNA修復、染色体再編成、CRISPR/Cas9、染色体断片化後再合成、次世代シーケンス解析
Depositors : 岩田悟先生、岩本隆司先生 (中部大学)
Strain name : C57BL/6N-Recql5<em1Chuan>
RBRC No. : RBRC12284
Strain name : C57BL/6N-Dp(Hmga2-Rassf3)<em4Chuan>In(10)<em4Chuan>
RBRC No. : RBRC12310
References : [1] Iwata S, Nagahara M, Ido R, Iwamoto T.
A Recql5 mutant facilitates complex CRISPR/Cas9-mediated chromosomal engineering in mouse zygotes.
Genetics. 2024 Jun 5;227(2):iyae054.
[2] 世界初、難しかった3個以上の染色体断片を結合させることに動物実験で成功─壊れた遺伝子を修復する技術の開発を目指す─
2024年6月10日中部大学プレスリリース

 

April 2025
Saori Mizuno, Ph.D.
Contact: Experimental Animal Division, RIKEN BioResource Research Center (animal.brc@riken.jp)
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