オキシトシン産生ニューロン Creドライバーマウス

RIKEN BRC August 2022
Mouse of the Month

オキシトシン産生ニューロンCreドライバーマウス

C57BL/6-Oxt<tm1.1(Cre)Ksak> (RBRC11316)

Fig.A and B

A. 上はマウスのオキシトシン遺伝子(Oxt)のゲノム構造、下はOxt-iCre knock-in (KI)アレルを示す。Oxt-iCre KIマウス(C57BL/6-Oxttm1.1(Cre)Ksak)では、OXTタンパク質コード配列の後に自己プロセシング配列furin-2Aを前に持つimproved Cre recombinase (iCre)が挿入されている(構築過程で使われたFrt配列が後ろに残っている)。
B. Oxt-iCreマウス視床下部の室傍核の免疫組織化学染色像。抗OXT (緑色)と抗Cre (赤色)抗体の免疫陽性シグナルはほぼマージすることから、Creはオキシトシン産生ニューロンに特異的に発現していると考えられる。スケール: 100 μm。3vは第三脳室。

オキシトシン(OXT)は、視床下部で産生される神経ペプチドです。OXT産生ニューロンは軸索を神経下垂体後葉、つまり下垂体後葉に投射し、ペプチドホルモンとして末梢的にOXTを血液循環に放出します。これらのニューロンはまた、いくつかの脳領域を神経支配し、そこで神経ペプチドとしてOXTを放出します。したがって、OXTは、子宮収縮や授乳などの末梢性機能だけでなく、社会的、攻撃的、恐怖、母性行動などの中枢性機能の調節にも関与しています。
今回ご紹介するOxt-iCre KIマウス(RBRC11316)は、Oxt遺伝子の内在性プロモーター制御下で、iCre組換え酵素を発現するCreドライバーマウスです。実際に寄託者の古市先生らは、Oxt-iCre KIマウスと、Caps2(Ca2+-dependent activator protein for secretion 2)遺伝子のfloxedマウス(C57BL/6-Cadps2<tm1.1Ksak>; RBRC11315)を交配して、解析を行い、神経ペプチドやペプチドホルモン、およびアミン系神経伝達物質(ドーパミンやノルエピネフリンなど)などを内包する有芯小胞のエキソサイトーシスの調節を担うCAPS2がOXTの分泌制御を調節し、その結果、社会性行動の制御にも関与していることを報告しました。
OXTは、末梢性と中枢性、どちらの機能面においても注目のペプチドホルモンであり、Oxt-iCre KIマウスを用いて、様々な生理現象のメカニズム解明や、社会性行動障害の治療法開発等につながることを期待します。

 

Depositor : 古市 貞一 先生
東京理科大学
Developer : 﨑村 健司 先生
新潟大学
Strain name : C57BL/6-Oxt <tm1.1(Cre)Ksak> (Oxt-iCre KI)
RBRC No. : RBRC11316
References : [1] Fujima S, Yamaga R, Minami H, Mizuno S, Shinoda Y, Sadakata T, Abe M, Sakimura K, Sano Y, Furuichi T.
CAPS2 Deficiency Impairs the Release of the Social Peptide Oxytocin, as Well as Oxytocin-Associated Social Behavior.
J Neurosci. 2021 May 19;41(20):4524-4535.
[2] オキシトシンの分泌を制御するタンパク質を発見!
~自閉症の早期分子診断法や治療法開発に光~
東京理科大学2021.05.17プレスリリース

 

August 2022
Saori Mizuno, Ph.D.
Contact: Experimental Animal Division, RIKEN BioResource Research Center (animal.brc@riken.jp)
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