Gal4/UAS発現システム依存的な遺伝子組み換えと細胞イメージングが可能なマウス

RIKEN BRC February 2023
Mouse of the Month

Gal4/UAS発現システム依存的な
遺伝子組み換えと細胞イメージングが可能なマウス

Crl:CD1(ICR)-Tg(UAS-cre/T2A/miRFP670)216Staka (RBRC11716)

Notch1シグナルの可視化

Notch1シグナルはCreリコンビナーゼとmiRFP670の発現(ともに進行中のシグナル)を誘導する。R26GRRマウス(RBRC04874)と組み合わせると、Creリコンビナーゼによって過去のNotch1シグナルがtDsRedで標識される(上段)。海馬や網膜を含む神経組織は、Notch1シグナルを受けつつ発生することが知られている。UC2iマウスを含む上記マウス系で、海馬における過去の、そして、発生中の網膜における進行中のNotch1シグナルの可視化に成功した(下段)。

Gal4/UAS発現システムは、酵母由来の転写因子Gal4と、そのエンハンサー配列であるUASの結合を利用した、遺伝子発現誘導システムです。ショウジョウバエなどではよく利用されている実験系です。今回ご紹介するUC2iマウス(RBRC11716)は、UAS-Cre-T2A-miRFP670トランスジーンの挿入により、Gal4依存的にCre組み換え酵素と近赤外蛍光タンパク質miRFP670を発現するトランスジェニックマウスです。Gal4の発現を制御することで、Cre/loxPシステムを介した遺伝子組み換えと、非侵襲的なin vivoイメージングが可能です。実際に寄託者の高橋先生、吉原先生らは、UC2iマウスと、Cre蛍光レポーターR26GRRマウス(RBRC04874)、細胞内ドメインがGal4に置換したNotch1受容体を発現するトランスジェニックマウスの3つを掛け合わせて、修飾Notch1受容体に内在性Notch1リガンドが結合すると、Gal4が細胞膜から切断され、Cre組み換え酵素とmiRFP670を発現することを確認しています。加えて、Creレポーターによる蛍光発現とmiRFP670によるイメージングにより、進行中と過去のNotch1シグナルの細胞レベルでの可視化を報告しています。
これまで、細胞動態の解析という面では、Cre組み換え酵素や蛍光タンパク質は、転写因子発現のイメージングに利用されてきました。しかし、UC2iマウスは、様々なGal4発現マウスと組み合わせることで、タンパク質間相互作用を可視化することもできます。今後、発生生物学分野をはじめ、幅広い分野での応用が期待されます。

 

Keywords : Gal4/UAS、Cre/loxP、miRFP670、in vivoイメージング、タンパク質間相互作用
Depositor : 高橋 智 先生・吉原 雅大 先生
筑波大学
Strain name : Crl:CD1(ICR)-Tg(UAS-cre/T2A/miRFP670)216Staka
RBRC No. : RBRC11716
Reference : Yoshihara M, Nishino T, Sambe N, Nayakama T, Radtke F, Mizuno S, Takahashi S.
Generation of a Gal4-dependent gene recombination and illuminating mouse.
Exp Anim. 2022 Aug 5;71(3):385-390.
Related strain : C57BL/6N-Gt(ROSA)26Sor<tm1(CAG-EGFP/DsRed)Utr>/Rbrc (RBRC04874)
Related archives : Mouse of the Month October 2018
Mouse of the Month March 2014

 

February 2023
Saori Mizuno, Ph.D.
Contact: Experimental Animal Division, RIKEN BioResource Research Center (animal.brc@riken.jp)
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