新規プローブを用いた、神経細胞におけるホモフィリック相互作用の可視化

RIKEN BRC March 2024
Mouse of the Month

新規プローブを用いた、
神経細胞におけるホモフィリック相互作用の可視化

B6;TT2-Pcdhg <tm(floxed neo)Tyag > Tg(Gt(ROSA)26Sor-CAG-PcdhgB2-FRET)#Tyag/TyagRbrc (RBRC11902)

左・右上・右下

(左)Pcdhγのアイソフォームの1つ、PcdhγB2にCFPおよびYFPを融合することで、その相互作用をFRETにより可視化するPcdhγB2-FRETプローブを作製した。
(右上)本マウスはPcdhγクラスターの22アイソフォームが共通して使用するconstant exonのCR1をloxPで挟むことにより、Cre酵素依存的に内在性Pcdhγを全て欠損する。
(右下)本マウスはCre酵素依存的にPcdhγB2-FRETプローブが過剰発現する。

クラスター型プロトカドヘリン(Pcdh)は、中枢神経系で発現する1回膜貫通型タンパク質群です。マウスでは、58種類のアイソフォームがあり、個々の神経細胞では、それらのいくつかが確率的に選択されて発現していることが知られています。そして、Pcdhは細胞認識分子として働き、細胞膜間相互作用においては、同一アイソフォーム同士のみが相互作用する、ホモフィリック相互作用を示すことが示唆されています。今回ご紹介する系統(RBRC11902)は、新たに開発されたフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)プローブを利用して、このPcdhホモフィリック相互作用をイメージング可能なマウスです。Pcdhにはα、β、γクラスターがありますが、22種類あるPcdhγのアイソフォームの1つ、PcdhγB2アイソフォームにそれぞれ別の励起波長を持つ2種の蛍光タンパク質(CFPとYFP)を挿入したFRETプローブを発現し、PcdhγB2アイソフォーム同士が相互作用した時にのみ、CFPとYFPが近づき、その状態でCFPを励起した際にエネルギーがどのくらいYFPへと移動するかを観察します。さらに、本系統では、内在性のPcdhγクラスターおよびPcdhγB2-FRETプローブの発現はコンディショナルに制御されており、Cre酵素存在下では、内在性のPcdhγクラスターの22アイソフォーム全てを欠損し、PcdhγB2-FRETプローブが過剰発現します。
本系統の開発によって、Pcdhホモフィリック相互作用の観察が可能となり、更なる神経活動の理解への糸口となることが期待されます。さらに、Pcdh遺伝子は自閉症や統合失調症への関与も報告されており、新たな疾患理解へとつながることも期待されます。

 

Keywords : プロトカドヘリン(Pcdh)、FRET、ホモフィリック相互作用、神経細胞、Cre/loxPシステム
Depositor : 八木健先生(大阪大学)
Strain name : B6;TT2-Pcdhg <tm(floxed neo)Tyag > Tg(Gt(ROSA)26Sor-CAG-PcdhgB2-FRET)#Tyag/TyagRbrc
RBRC No. : RBRC11902
References : [1] Hoshino N, Kanadome T, Takasugi T, Itoh M, Kaneko R, Inoue YU, Inoue T, Hirabayashi T, Watanabe M, Matsuda T, Nagai T, Tarusawa E, Yagi T.
Visualization of trans homophilic interaction of clustered protocadherin in neurons.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2023 Sep 19;120(38):e2301003120.
[2] 神経細胞でのPcdhホモフィリック相互作用を可視化―自閉症や統合失調症の理解促進へ―
2023年9月22日大阪大学プレスリリース
Related mouse resource : B6;TT2-Pcdhg(floxed neo) (RBRC02800)

 

March 2024
Saori Mizuno, Ph.D.
Contact: Experimental Animal Division, RIKEN BioResource Research Center (animal.brc@riken.jp)
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