自然免疫応答を制御する転写因子:IRF3

RIKEN BRC November 2020
Mouse of the Month

自然免疫応答を制御する転写因子:IRF3

B6.Cg-Irf3<tm2.2Ttg> (RBRC10094)
B6.Cg-Irf3<tm2.1Ttg> (RBRC10095)

自然免疫応答におけるIRF3の活性化: 概要

Courtesy of Tadatsugu Taniguchi, Ph.D.

自然免疫応答におけるIRF3の活性化: 概要

 

IRF3 (インターフェロン調節因子3)は様々な細胞に存在し、自然免疫応答を担う転写制御因子です。非感染時には細胞質内に存在し、ウイルスや微生物感染によって、パターン認識受容体が刺激を受けると、IRF3はリン酸化され、活性型として、核内へと移行します。そして、I型インターフェロン遺伝子(IFN-α/β)を含むサイトカイン遺伝子の転写を促します。IRF3は、このような病原体感染から宿主細胞を守る役割の他にも、炎症誘発性疾患、自己免疫疾患、リポ多糖誘導性敗血症ショックへの関与等、多様な機能を持つことが知られています。

今回ご紹介する系統はIrf3遺伝子のコンディショナルノックアウトマウス (RBRC10095)です [1]。開始コドンを含むエクソン2, 3, 4をloxP配列で挟む形で作製されました。寄託者の谷口維紹先生、柳井秀元先生らは、本系統と全身性Cre発現マウスとを交配させ、Irf3-null欠損マウス(RBRC10094)を作製、ゲノムレベルでも、タンパクレベルでも、IRF3が欠失していることを確認しています。加えて、各種Creドライバーマウスを用いて、T細胞、B細胞、または骨髄系細胞特異的に、IRF3を欠失させ、各種細胞でのIRF3の機能を探っています。また、過去にIRF3 ノックアウトマウスとして使用されていた系統(RBRC000858: B6;129S6-Bcl2l12/Irf3 <tm1Ttg >/TtgRbrc)は、Irf3遺伝子に隣接するBcl2l12遺伝子をも欠失していることが報告されていますが[2]、新規に開発された本系統は、Irf3遺伝子のみを欠失していることが明らかになっています。

自然免疫応答を理解することで、各種疾患の原因解明、治療法の開発へとつながることが期待されることから、IRF3の機能を細胞種・組織ごとに詳細に解析可能な本系統は、今後の研究発展に有用であるといえます。

 

Depositor : 谷口 維紹 先生・柳井 秀元 先生
東京大学
Strain name : B6.Cg-Irf3<tm2.2Ttg>
(Irf3遺伝子ノックアウトマウス)
RBRC No. : RBRC10094
Strain name : B6.Cg-Irf3<tm2.1Ttg>
(Irf3遺伝子floxedマウス)
RBRC No. : RBRC10095
References : [1] Yanai H, Chiba S, Hangai S, Kometani K, Inoue A, Kimura Y, Abe T, Kiyonari H, Nishio J, Taguchi-Atarashi N, Mizushima Y, Negishi H, Grosschedl R, Taniguchi T.
Revisiting the role of IRF3 in inflammation and immunity by conditional and specifically targeted gene ablation in mice.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 May 15;115(20):5253-5258.
[2] Nakajima A, Nishimura K, Nakaima Y, Oh T, Noguchi S, Taniguchi T, Tamura T.
Cell type-dependent proapoptotic role of Bcl2L12 revealed by a mutation concomitant with the disruption of the juxtaposed Irf3 gene.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Jul 28;106(30):12448-52.

 

November 2020
Saori Mizuno, Ph.D.
Contact: Experimental Animal Division, RIKEN BioResource Research Center (animal.brc@riken.jp)
All materials contained on this site may not be reproduced, distributed, displayed, published or broadcast without the prior permission of the owner of that content.


コメントは受け付けていません。